第11回 自閉症の超(極端な)男性脳 Extreme Male Brain 仮説について/腎不全発症から10年―なぜ私は人工透析を拒否してきたか

2022年12月30日

遺伝子そのものではなく、DNAやそのまわりのいろいろな化学修飾によってその働きを制御する「エピジェネティクス」は日常生活において健康を考える上で有用な知識になっています。そういったことを題材に毒性研究者や医師や教育職および福祉など多様な職種の方々で開いた「健エピのつどい」の第12回目の公開版をお送りします。今回は、市民運動活動で活躍されている水野玲子さんの講演と様々なNPOの活動を取材されている山中みゆきさんの講演をしていただきました。

自閉症の超(極端な)男性脳 Extreme Male Brain 仮説について

                               水野玲子

 水野玲子さんの簡単な自己紹介;

興味を持っている問題 :有害化学物質の健康影響 環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質) 胎児・子ども・次世代影響 性差・先天異常・発生、 現代病・難病と化学物質の接点。

現在活動中の市民団体: NPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 ,香害をなくす連絡会(5市民団体) 2002年~8年 カネミ油症被害者支援センター(YSC)

 著書 『知らずに食べていませんが? ネオニコチノイド』高文研 『子どもの脳に有害な化学物質のお話し』食べもの通信社 『香害は公害』ジャパンマシニスト社 など 雑誌『食べもの通信』2015年~連載

 

長年疑問に思ってきたこととして、つぎのようなことがあった。

・男の子に発達障害が多い理由は?(自閉症の男女比 男/女 3:1~5:1)

・なぜ、女の子より男の子に多い? 脳の性分化への性ホルモンの影響?

・内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の 脳への影響に性差は?

それに関連して以下のような論文も発表した。

Mizuno R. The Male/Female ratio of fetal deaths and births in Japan (Lancet 2000) Res Letter: 日本で70年代後半より男児死産が増加、(以前は男児は女児の約1.5倍、今では2倍以上) 胎児期の環境ホルモンが、とくに男の子に影響?

Mizuno R. The increase in male fetal deaths in Japan and congenital anomalies of the kidney and urinary tract (Reproductive Toxicology 2010)

いろいろな性差についての情報検索でこの仮説をみつけた。

 

自閉症の超男性脳 仮説とはサイモン・バロン コーエン 『共感する女脳 システム化する男脳』(2005 Simon Baron-Cohen (ケンブリッジ大学 精神医学教授 自閉症センター所長) )の中で自閉症および男女の性差に関する研究結果が述べられ、

◇システム化する脳 (男脳):システムとは、分析、検証、システムのパターンと支配する隠れた規則を探り出そうとする 物事がどのように機能しているのか、どのような規則で動いているのかに関心。

 ◇共感する脳(女脳) :共感とは、他の人が何を感じ、何を考えているのか、それに対して適切な感情を催す傾向

自閉症は極端なシステム化脳で、共感の発達が著しく劣る:自閉症の超男性脳 仮説

 

もともとは、1944年 アスペルガー博士が自閉症の超男性脳仮説を提唱し、バロン・コーヘン博士が、The extreme male brain of autism(自閉症の超男性脳), Trends in Cognitive Sciences,2002, Foetal estrogen and Autism(胎児期のエストロゲンと自閉症),Molecular Psychiatry, 2020 などでそれをあらためて検証し提唱している。

2020年の論文では、

・3万6000人の自閉症児と母親の調査

・エストロゲンはヒトを女性化したり、男性化したりする。標的となる細胞によって違う。

・過剰な男性化は、 アロマターゼ酵素の異常(突然変異、エピジェネ?)により アンドロゲンが蓄積することによっておこる。

・ 胎児期の高レベルのエストロゲンばく露は 自閉症に関連する

といったことが述べられている。

バロン・コーヘン論文についての感想と残された疑問

1944年にアスペルガ―博士が自閉症の超男性脳仮説を提唱してから78年。 ケンブリッジ大学自閉症研究所長のバロン・コーヘンがその仮説を検証し続けて約半世紀。 それでも、まだ Foetal Estrogen と自閉症脳との関連は注目されていない。

 私見 :わが国は急速な近代化の過程で大量の人工化学物質を使用してきた。 その中でも環境ホルモン(内分泌かく乱物質)は、 男児と女児に性特異的な影響を及ぼしている。 胎児の脳が発生する母親の子宮内は、 すでに人工的なEstrogen 様物質に汚染されており、 それが原因で発達障害などが増えているのではないか?

 

コメント1:自閉症の原因として、エストロジェンがあるという仮説は初めて知った。自閉症の増加は確かに起こっているが、原因はよくわかっていない。今回の講演の環境ホルモンの影響についても否定できない。

コメント2:自閉症に男女比が大きく偏っていることは知られているがその理由についてはほとんど記載がなかった。エストロゲン、アロマターゼとの関係は大変勉強

になった。

コメント3:発育促進のために使用されるエストロジェンを米国産牛肉などから摂取する

ことに警鐘を鳴らす動きもある。食の安全よりも経済優先の政治的な動向も

あり、市民レベルの運動でこれらに対抗していく必要がある。

コメント4:環境ホルモンの毒性学的な問題が下火になっている。もっとこれらの問題を見

直してエピジェネティクス的観点をいれて科学的な検証を進めていく必要がある。

コメント5:環境エピジェネティクスの分かりやすいパンフを作って一般のひとびと向け

に啓蒙していく必要がある。 

質問 :企業などからゲノム編集トマトが学校や福祉施設などへ配布されて栽培、試食 

 を頼まれることがあった。大変危険なことだと思うがどう考えるか?

  答: 遺伝子組み換え作物については外来の遺伝子を導入するが、ゲノム編集作物は基本的にこれまでやってきた育種と同じなので比較的安全性は高いと考えられる。

ただし、その遺伝子の操作に伴うリスクについて安全性が十分確認できるまでは制限をしていく必要はあると考える。

 

腎不全発症から10年―なぜ私は人工透析を拒否してきたか

ヴァイオリニスト劉  薇さんの紹介     山中 みゆき

 

 劉 薇(りゅう・うぇい)さんは、
中国西北部の蘭州に生まれ。文化大革命の時代に中国で幼少期を過ごし、父親の薫陶を受け7歳の時にヴァイオリンを始め、大変な苦労の中、西安音楽学院卒業後、1986年来日。桐朋学園大学音楽学部に留学後、東京芸術大学大学院修士課程、博士課程を修了する。

2005年に慢性腎臓病を発症。人工透析をすると演奏活動をやめることになるとわかり、雑穀と野菜中心の食事療法で病気を克服しようと決意した。今の腎不全に対する栄養指導は栄養素の量の制限ばかりで、質をあまり考えていなかった。古来、人は穀類なかでも雑穀で生きてきた。そこで自分で雑穀中心の食事療法を考案した。それにより、人工透析をせずに音楽活動を送れるようになり、その料理レシピ本も出版。

 

ところが3.11東日本大震災から精神的ストレスなどで演奏ができなくなり、また、カナダで転倒し、歯折れ・抜歯から感染症になり、腎不全が再悪化することになった。そこで、夫から腎移植を受け回復するも、今度は新型コロナ禍で免疫抑制剤投与されているからだで通常の演奏活動はできないということから、現在は 八ヶ岳に夫婦で移住し、演奏をインターネット配信して音楽活動、雑穀薬膳の講習会など 元気に活躍している。

 

 これまでの取材で考えたことは、今の日本では、例えば認可食添は欧米100-200品目に対し、1500品目など食の安全に関して十分考慮されていないといこと。また、医療でもクレアチンなど数値で診断して投薬・治療をするので、個人差の考慮や薬の使い過ぎを招いているということでした。

 

コメント1:小児科は薬ないのがよいので少し立場が異なるが、確かに成人の医療では薬漬けとなり、例えば高脂血症剤で寿命は延びないというデータが出ているにもかかわらず処方している。本当に必要かどうか見直すべき。栄養指導においても、カロリー制限とかでなくどういったものをどうやって食べるか栄養士に高度な質が求められる。

 

コメント2:10年来、Hba1cの数値だけで自分も糖尿病と診断されているが、自分としては特に問題となる症状はでていない。やはり個人によって症状や状態は異なり、きめ細かい診断や治療が必要。また、その病気がどうして起こるかということをよく考えない医者が多く、 新しい知見がなかなか生かされていない。

コメント3: 農薬や家畜などへの抗生物質投与など内分泌かく乱を引き起こすリスクのあることが十分な検証なしに行われている。政府などの顔色を窺わないで、真に科学的な検証により判断していく必要がある。

コメント4: 一方で安く広い地域で作物を提供できるなど農薬・遺伝子操作技術などのメリットはあるので、過剰な抑制ではなく、科学的な知見から正しく怖れることが必要。

 

                               以上

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