第5回 今朝の小田急線の中の赤ちゃん スマホと親切

2020年12月23日

職場に毎朝、小田急線で通勤しています。

今朝、出発間際の電車に飛び乗ったら、乳母車がありました。そこに生後半年ぐらいの赤ちゃんが乗っていました。ベルトを外して立ち上がりたがり、開いていたドアから今にもホームに落ちそうでした。冷や冷やして見ていると、突然、お母さんがスマホを取り出したのです。もしかしたら子どもそっちのけで動画を探しているように見えました。

じっと見ていると、ある動画で止めて、赤ちゃんに見せたのです。それは雪だるまのようなキャラクターが登場するものでした。その途端、赤ちゃんが、「アッ、アッ」と反応しました。どうも前から知っている大好きなキャラクターだったようでした。それを画面いっぱいに広げ、絵が動き出し、雪だるまが宙返りし出すと、乳母車から立ち上がることは完全に忘れてしまい、おとなしく座り出して、スマホを抱えて画面を見入っていた。その間にお母さんは無事にベルトを締め、落ちる心配を回避することができたのです。もしかしたらこの時、スマホを利用したのは、マスクをしていて大きな声であやすことができないと考えたからかもしれません。

これまで私には、スマホで子育てする母親を敵視してきたところがありました。スマホゲームの中毒性が精神科治療の対象になったことを聞き、スマホに良い点はないと思いこんでいたからです。しかしスマホの画面の動く絵を「キャッキャ、キャッキャ」言いながら、嬉しそうに見つめる乳児を見るにつけ、スマホにも良い面があることが分かりました。

 

急行停車駅でホームを挟んで別の電車に乗り換えました。そうするとその親子も乳母車ごと乗ってきました。その駅が始発の電車でしたが、並んでいた客で、すでに席はほぼ埋まってしまっていました。そこでお母さんは出入り口のドアのところに立ち、一番端の席に沿わせるように乳母車を置きました。すると一番端の席に座っていた男性が、一つ内側に移動して端の席を空けたのでした。そのお母さんが座るのかと思って見ていたのですが、結局、座らずに立っていました。しばらくして抱っこ紐で、抱っこしてあやし始め、その席には、あとで乗ってきた別の客が座ってしまいました。

しかし、男性が無言で譲った、ポッカリ空いた一番端の席の空間が、妙にほのぼのとした空間に見えた。そこからまだ来ぬ春の温もりが感じられた気がしました。

 

2020.12.22

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