第13回 代替医療その5 鍼治療と超音波診断装置  

2021年11月30日

 鍼治療についての最終回です。ここまで見てきたように、鍼治療はWHOや厚労省でも認められているような効果は、神経痛、自律神経失調症、リウマチ、関節炎、高血圧、胃腸病、糖尿病など多くの疾患にあります。しかしながら、ほとんどの場合、私たちの第一選択としては西洋医学の専門病院に行くことになります。その理由としては、鍼治療では一般的な西洋医学の治療に比べ治療効果が低いことがあると思います.

もともと、東洋医学では、体全体の気・血・津液の巡り、経絡・五臓六腑の働き、陰陽のバランスを診断し、その乱れを施薬、施術で徐々に整えていく(1)ので、即効性や顕著さに欠けるところはあると思います。また、鍼治療においては、ピンポイントでの的確なツボへの施術がむつかしく、そのために危険を伴うようなツボへの施術は避け、効果は比較的低くても安全なツボへの施術に限られていることもあると考えられます。例えば鍼治療が原因の気胸の事故例なども報告されています(2)。このような事故を防ぎより安全で確実な治療ができるように下図のような超音波診断装置を用いた鍼治療も検討されています。

図1.超音波診断装置を用いた鍼治療システム(Development and Evaluation of Inexpensive Ultrasound Using A-Mode and M-Mode Signals to Identify Lung Depth and Avoid Risk of Pneumothorax in Acupuncture(Chen,2021)より)

図2.超音波診断装置画像(Ultrasonography in Acupunctured Uses in Education and Research(Leow.,2017)より

動物実験を含め、このような検討を進めていけば、より安全で効果的な鍼治療が可能になり、またこれまであまり使われてこなかったツボについても治療が可能になり、これまでの限定的な疾病以外にも西洋医学だけでは行き詰っていた新しい治療法が開拓されていくように思います。

                    2021.11.30. 堀谷 幸治

 

 

参考文献

1.平馬直樹監修;東洋医学のすべてがわかる本(ナツメ社)

2.吉 備 登(1998)

 

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