第5回 「睡眠」その2 眠りと免疫

2020年12月24日

 睡眠は生きていくうえで必要不可欠のものと多くの人が考えていると思います。では、もし、眠らないでいたらどうなるでしょうか? 例えば、苦痛や興奮させるような刺激を与え続けて「断眠」という状態にしたら、ラットの実験では皆3週間以内に死んでしまったということです。しかし、その死因については不明な点が多いようです(1)。ただ、人を用いた実験やショウジョウバエ(昆虫にも睡眠があるのです!)を使った試験の結果からも体に悪いことは確かなようです(2)。 死に至るような悪影響として考えられるものの一つは免疫力の低下です。

 

このことは、もう皆さんも経験的にご存知でしょう。風邪をひいたときでもまずは睡眠をとるのが一番だと「一に睡眠、二に〇〇」という風邪薬のキャッチコピーでも言っています。ですが、調べてみるとむしろ因果関係は逆で、「細菌やウィルスなどに感染したときに免疫として働く物質が眠気を催させる」のであり、それは「免疫力をアップさせるために脳に睡眠の信号を送って他でエネルギーを使う事をやめさせようとしているということらしいのです。また前回出てきた眠りを引き起こす物質「メラトニン」が免疫力を高めるという事も分かってきました(3)。とすれば、健康な状態では、メラトニンが必要なだけ出ていればそれほど多くの睡眠は必要ない。ということになります。

 この免疫力を高めたり、低下させたりするのも実は、食べ物や精神状態によって大きく影響を受ける「エピジェネティクス」が関係していると考えられます。そして、私は、睡眠不足が直接免疫力の低下を招くのではなく、「自分は睡眠不足」という精神的なストレスが免疫力低下の原因かもしれないと思っています。

 したがって、「My研究」としては、もし実験できる環境にあれば、例えば、睡眠時間を6時間として、本人には「4時間しか寝ていない」と思わせるグループと「7時間寝た」と思わせるように細工をして、それぞれの血中のストレスホルモン量と免疫細胞の数を調べ、更にグループを入れ替えて同様に調べることなどが考えられます。また、自分の体で試すなら、約4時間睡眠(3時間50分、4時間、4時間10分)と約6時間睡眠(5時間50分、6時間、6時間10分)のとき、自分の体調チェックなどで調べてみるのはどうかと考えています(*)。

 *感覚として4時間前後の睡眠では睡眠不足という認識になります。かつそのグループ内では本当に精神的ストレスよりも時間の影響が大きければやはり10分刻みでも体調に差が出ると考えられます。同様に6時間前後の睡眠ではまずまず十分な睡眠がとれたという共通認識ですが、もし時間そのものが影響していれば10分刻みにも相関性が取れると考えられます。理想的には大体4時間、大体6時間で細かい時間は分からないようにして後からビデオなどで正確に睡眠時間を調べるようにしておけば本当に時間の要因だけなのか精神的ストレスが関与しているか調べる参考になると思います。                                                 

 

参考文献

  1. 馬屋原 宏(2020):谷学発!常識と非常識 第60話 睡眠とは何か④
  2. 上野 太郎,粂  和彦(2007):「睡眠の分子生物学薬理誌」(Folia Pharmacol. Jpn.)129,408~412
  3. 桑田啓貴(2020):JICD, 2020, Vol. 51, No. 1 睡眠ホルモンメラトニンによる免疫調節機能について

 

                                           2020.12.24

第5回 「睡眠」その2 眠りと免疫」 に4件のコメント

  1. Sato N より:

    初めまして
    質の良い睡眠が免疫力をアップするお話とても参考になりました。自分が寝ている間の様子がわかるスマホのアプリもありますね。自分のいびきや歯ぎしりを知るのも興味深いですがちょっと怖くなります。
    楽しい夢を見た朝は、精神的にも良い影響を与えてくれます。睡眠についてもっと知りたくなりました。

    • 堀谷 幸治 より:

      コメントありがとうございます。健康とのかかわりで睡眠はまず最重要ポイントのひとつであることはだれしも同意されるでしょう。しかし、睡眠は昔から研究されているにも拘わらずまだわからないことが本当に多いようです。その最たるものが動物特有の睡眠時間です。ヒトの場合睡眠時間は長時間型(アインシュタイン等)と短時間型(ナポレオン等)に分かれることはよく知られていますが、その原因についてはまだ十分わかっていないようです。ですので、是非皆さんにも自分の体でどういった睡眠が体調をよくするのかいろいろ試してみて下さい。きっと貴重な発見があると思います。

  2. 匿名 より:

    私にとって悩みの睡眠です。過度のストレスからか、眠れない日が続き、レストレスレッグス症候群となり、痙攣だめと、ラグナイトを服用し、眠りにつきます。辛いです。睡眠は精神状態にも影響があるとわかりました。睡眠はとても大切です。眠ることで、安定できます。ありがとうございました。

    • 堀谷 幸治 より:

      コメントありがとうございます。レストレスレッグス症候群はお辛いことと思います。
      レグナイトを服用されておられるとの事ですが、専門医の方から処方されておられますでしょうか?副作用もありますし、離脱症状もあると思いますので減量する際にも徐々に行う必要があります。必ず専門医とご相談なさってください。わたしは医者でも薬剤師でもありませんので的確なアドバイスはできませんが、睡眠に関してはできるだけ薬物に頼らず、メラトニンの十分な分泌を促すような明暗の概日リズムを心掛ける事でも改善できることはあると思います。また、15分-30分といった短時間でも何回かとることでかなり脳にとっての休息にはなるようですのでもう少しフレキシブルにご自分の睡眠をお考えになっても良いと思います。

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