第16回 知らずに食べていませんか ネオニコチノイド
2023年05月30日
遺伝子そのものではなく、DNAやそのまわりのいろいろな化学修飾によってその働きを制御する「エピジェネティクス」は日常生活において健康を考える上で有用な知識になっています。そういったことを題材に毒性研究者や医師や教育職および福祉など多様な職種の方々で開いた「健エピのつどい」の第16回目の公開版をお送りします。今回は、NPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の 水野玲子さんによる「知らずに食べていませんか ネオニコチノイド」 をおとどけします。。
〇知らずに食べていませんか ネオニコチノイド - (水野玲子)
(1)ネオニコチノイド農薬とは
スーパーで売っているほとんどの野菜に使用されている。
ミツバチ大量死の原因として、証拠が蓄積
*トンボや鳥など生態系全体に悪影響
*EUは使用中止へ、日本は使用促進
*日本の子どもの尿からネオニコ検出
(2)ネオニコチノイド系農薬の種類
タバコの有害成分 ニコチン に似ている。 ネオニコチノイドとは、新しいニコチン様物質 という意味。
日本での農薬登録 第1世代7成分 有効成分名
・*アセタミプリド ・*(イミダクロプリド )
・*(クロチアニジン )・*(チアメトキサム)
・チアクロプリド ・*ジノテフラン ・ニテンピラム
()内3成分EU禁止 *日本で農薬再評価(2019,2021)を開始した成分
新しいネオニコ 第2世代4成分
・フルピラジフロン(2015) ・トリフルメソピリウム(2015) ・スルホキサフロル(2017) ・フルピリミン(2015)
(3)ネオニコ農薬の特徴
▽浸透性農薬 種子を浸すと茎、葉、根などあらゆる組織に現れる 作物内部に吸収され洗っても落ちない
▽神経毒性がある ▽代謝物の毒性が高い ▽複合毒性が強い ▽残効性が高い
ネオニコ安全神話
・弱毒性・・・虫にはよく効くが、ヒトや動物に対する毒性は弱い。
・少量で効く 環境保全型農薬 有機リン系農薬と違い 「ヒトには安全」 というウソ
現実は・・・ ・複合毒性が強い ・生体内に入って毒性が強まる
・人にも神経毒性あり
・生物多様性の破壊
日本 ネオニコチノイド農薬 増える国内出荷量 最近ではジノテフラン(商品:スタークル剤など)が多用される
(4)ネオニコ農薬の使用例
日本では、田植え前に育苗箱でネオニコやフェニルピラゾール系農薬などの浸透性の高い農薬を使用することが多い。
水稲育苗箱施用剤 ネオニコチノイド系 商品名:アドマイヤー(成分:イミダクロプリド) スタークル(成分:ジノテフラン) ダントツ(成分:クロチアニジン)
フェニルピラゾール系 商品名:プリンス(成分:フィプロニル) キラップ(成分:エプチロール)
*フィプロニルの毒性
フィプロニルの毒性は極めて高い。 神経伝達物質GABAの作用を阻害 。体重1kgあたりの一日摂取許容量(ADI) 0.00019mg/kg/day 日本の登録農薬の中で最も低い値
ネオニコと並び、浸透性農薬 ミツバチ大量死に関連が疑われる
EU ◆EUでは、 2017年9月農薬登録失効 農業用に使用不可
◆ノミ・ダニ退治には許可 家畜小屋など 食品流通関連で禁止
中国 ◆2009年 自国内での使用禁止 日本への輸出は許可
(5)ネオニコ農薬と発達障害
特別支援教育をうける 児童・生徒数 増加 している。
その原因は? ⇒ 母親の子宮内は 多種類の有害化学物質に 汚染されている
日本の子どもの尿から、多種類の農薬
3歳児(223人)の 尿中ネオニコチノイド・有機リン濃度
▽100% 有機リン・ピレスロイド検出 ▽79.8% ネオニコチノイド系農薬
(Osaka A, et al. Environ Res.2016)
ネオニコチノイド農薬が ひよこ(chicks)に自閉症に似た症状 北海道大学とイタリアのトレント大学の共同研究 Neonicotinoid causes ASD-like symptoms in chicks T. Matsushima.et al, Cerebral Cortex Comm. 2022
(6)日本はEUなどのネオニコ農薬使用制限の動きと逆行して緩和に。 EUでネオニコ一時使用中止が決定した後
2014年 クロチアニジン 急性中毒発生推定量:日本0.6mg/kg (EU0.1mg/kg) 2015年 クロチアニジン残留基準緩和
ほうれん草 3ppm→40ppm
農水省 “減農薬推進のためには ネオニコを!”
- ネオニコなら省力化できる • 高齢化した農家は大助かり
- 少量で、散布回数を減らせる • 特別栽培農作物にできる(化学合成農薬と化学肥料を慣行レベルの5割以上削減) • エコファーマーの認証を得られる
日本の残留基準は緩すぎる ⇔ 農薬ムラの結束
日本では農水省、JA,農薬メーカー、御用学者の結束によってEUなどの規制の動きに逆行する動きをしている。このままでは、
・ミツバチの受粉減少による収穫減
・子どもの発達・神経に影響 ・農薬の慢性中毒の広がりなどの懸念
農薬を減らして、生態系を守り、食の安全、子供の症状緩和
コメント1:輸入の小麦にグルホサートが残留していることは知っていたが、国内のお米にも問題となるような残留農薬があることを初めて知った。また、慣行の栽培法より散布回数が減ったことなどで「減農薬」(特別栽培農作物)となることなど日本の表示に問題があることも初めて知った。これからもっと安全な農作物が何かを考えていかねばならないと思った。
コメント2:農水省などから、日本の毒性試験は十分に実施されているというが、エピジェネティクスの新しい知見などが取り入れられていない。本当に国民の健康と安全の視点が欠けているように思う。
コメント3:御用学者という存在は正当な毒性評価の障害となっている。農薬のリスクとベネフィットに関して、安全係数などにもっと正確な情報を入れて、評価システムを見直していく必要がある。
コメント4:環境化学物質が脳関門や胎盤を簡単に通っていることは驚く。これまでの考え方をあらためて環境化学物質の危険性について考えていく必要があると思った。
以上
モンサント裁判は世界では詳しく取り上げられているのに、日本では全く取り上げられていません。なぜ日本だけ、世界の基準と逆行して農薬等の基準が緩くなっているのでしょうか、危機感のない日本は世界のゴミ捨て場になっている感があります。その原因は農薬ムラのロビー活動のすごさでしょうか。戦後、「米を食べると頭が悪くなる」と主張した御用学者が居ました。3.11では原発や放射能は安全だと叫んだ御用学者が居ました。「化学物質というのはその使用料が問題で、決められた量以下ならば全く問題ない。例えば 塩は大量に摂取すれば死に至るが、適量であれば毎日食べても全く問題ない。欠乏すれば病気になってしまう。」という主張がありますが、「そのADI以下の量でマウス実験で異常が発見されているのです」人類の個の100年の間違った進化が負の遺産として我々に襲い掛かっていると思います。に突き付けられた
記事にコメントありがとうございます。農薬などの化学物質はご紹介したようなリスクだけでなくこれまで人類に寄与してきた有益性も無視できないとは思いますが、やはり今突き付けられている警告に科学的検証で答えていくことが何より重要だと思います。