第7回障害傾向の子どものいるクラスのとても良い幼稚園の先生

2021年03月05日

          

  聖徳大学に赴任後、特別支援教育を担当するようになり、その一環として、幼稚園や小学校などを訪問して、発達支援活動をしている。具体的には、発達障害傾向の子どもの保育や子育てに困っている先生や保護者の方に、心理士資格を持つ教員と一緒にアドバイスをしてくるというものである。

 先月の終わり、東京都下の幼稚園を訪問した。何人か発達障害傾向の子どもがいたのであるが、その中でもとりわけ気になったのが年長の女児であった。この幼児は4月から小学校に上がることになっているのだが、集団行動がうまくできないでいた。訪問した時は卒園の発表会の演奏の準備をホールで行っていた。担当はピアニカである。幼稚園の先生の話によると練習はほとんどしていないとのことであった。しかし、ホールでは周りのピアニカ担当の子どもの鍵盤の動きをよく見て、一生懸命真似しようとしていた。音楽には興味を持っていると思われた。実は1月にもその幼稚園を訪問してその女児を見ていた。その際は、給食の後のお昼休みに、一人で、一心不乱に絵を描いていた。集団行動は苦手でも芸術にはとても興味を持っていると思われた。

 ホールでの演奏の練習が終わると、年長組の教室にみんなと戻ってきた。そこで担任の先生の下、各楽器ごとの小員数での話し合いが行なう時間であった。しかしその女児はピアニカのグループには入らず、ひとり勝手に、CDをスイッチを入れて音楽をかけ、踊り出した。それを見ていたクラスの園児たちはそれを誰もとがめることはなく、逆に一人の男児は立ち上がって「〇〇ちゃんの踊り上手だね」と言ったのである。その言葉に釣られるようにピアニカ担当の数名が、その女児と踊り出したのである。それを見て、担任の先生は注意することもなく、温かく見守っていたのである。

 この一連の光景を見て、なんて良いクラスなんだろうと思った。そしてなんて良い担任の先生のクラス運営なのだろうと思った。きっとクラスメイトたちは障害児に優しい大人になり(過度な親切ではない自然体の関わりができる)、共生社会形成の良き人材になると思った。

 余談だが、その日の午後、幼稚園の先生に集まっていただき、この女児を含め、数名の発達障害傾向の子どもに対する私なりのコメントをお伝えした。その中で、上記の年長のクラスの担任の先生の素晴らしさについて改めてお伝えするとともに、若い先生たちに対し、この主任の先生のような障害児と健常児のいるクラスの良い運営ができるようになってほしいと伝えた。

                            

 

2021.3.5 

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