第6回 睡眠その3 睡眠時間と寿命

2021年01月15日

  睡眠を削って無理をして働く人が短命で、十分睡眠をとっている人は長生きするということを信じている人は結構多いと思います。先に書きましたように、本人の自発的な動機でなく、過酷な業務負担などからの睡眠不足はストレスも加わって確かに脳梗塞や心臓発作など発症し短命となるケースが多いと思われますが、自分の夢や目標に向かって「寝食を忘れて」打ち込んだ人は短時間の睡眠でも案外長生きだったりします。

 一方、長時間睡眠(過剰な睡眠)はむしろ短命という報告があります。ハイリスクの持病や不眠症などの事例を除くと1.最も平均寿命の長くなると考えられる睡眠時間は、6.5-7.4時間。2.女性の場合6.5-7.4時間よりも短いと死亡リスクが高くなるが、男性の場合はそれほど変わらない。3.男女とも6.5-7.4時間より長くなればなるほど死亡リスクが上がるということがわかりました。(1)

図1 年齢を調整した睡眠時間と死亡リスク    図2 2年内死亡等を除いた睡眠時間と死亡リスク (文献1より)

 2.の男女差にはやはり女性ホルモンの分泌がかかわっていると思います。よくエストロゲンなどは抗老化ホルモンといわれ、抗動脈硬化作用など心血管系への好影響をもたらすことがわかっています(2)。これらから、睡眠時間の短さがそれらの分泌量の低下を招き死亡リスクの増加に関係しているという可能性が考えられます。

3.に関してはまだよくわかっていないようですが、私は浴びる日照量の低下や筋肉負荷の低下がそれぞれ原因の一つではないかと考えています。もし、機会があれば上記と同様の調査において睡眠時間とともに暴露照明時間、運動量データを加える事でどのようになるか調べてみたいと思っています。

 

文献

1:玉腰 暁子「睡眠時間が7時間の人の死亡率が一番低い睡眠時間と死亡との関係」Sleep 27巻 51-54頁(2004)

2:折茂 肇 性差医学  学術の再点検-ジェンダーの視点から (その2)学術の動向 2003.4 8-12

                                      2021.1.14

 

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