第11回  「ゲノムインティング(GI)と胎盤:その1」

2021年06月20日

 胎盤は哺乳類において、母体と胎児をつなぎその間で、酸素と二酸化炭素と栄養分と老廃物とを交換している。また、出産と共に消滅するという巨大な内分泌器官であり、様々なホルモンを分泌している重要な器官でもある。

 

 哺乳動物は大きく単孔類、有袋類および真獣類に分類される。単孔類は胎盤を持っていなくて、有袋類では未発達ながら胎盤は存在している。そのために有袋類では子供は極小で未成熟なまま生まれてくる。真獣類は有胎盤類とも呼ばれ、よく発達した厚い胎盤(絨毛膜胎盤)をもっており、母体内で十分に成長した胎児が出産されてくる。胎盤を持つ生物種は、鳥類や単孔類よりも成熟した状態で子を産むことができ、生存には有利であるが、この有利さは、恐竜が絶滅した約6600万年前のことであると考えられている。

 

原始的な真獣類は、現在のネズミのように小さく、夜行性だったと考えられている。おそらく巨大隕石が地球に衝突して、それによる気候変動(寒冷化)や暗黒化による多くの植物の衰退によって、恐竜が絶滅し、胎盤が発達した真獣類が生き残り、それが現在の様に地球上で進化し、繁栄したものと考えられている。

 

 胎盤は母体の子宮内に形成されるが、その大半は胎児側の細胞によって形成されている。受精卵に由来する絨毛細胞が、母体の基底脱落膜にもぐりこんだものが胎盤である。その間の血管は母体からの血液で充満されており、さきほどのガス交換や栄養交換を効率よく行っている。

 

 卵子と精子から作られる受精卵は、母体にとっては半分が「非自己」であり、それを排除する免疫機構が働いえいるはずだが、「母子間免疫寛容」という機構が働いて、胎児由来の物質を母体に異物と認識させない特別な機構が働いているらしい。胎盤の絨毛細胞は巧妙な仕組みでこのことを行っている。胎盤はまた、さまざまな病原体の通過を監視する機構が存在するが、不思議なことに通過しやすい病原体とそうではない病原体とが存在すると言われている。今回は胎盤そのもの話だけで、エピジェネティクな面には触れられませんでしたが、次回ではそれについて書いてみたいと思います。

この文章は、Newton20216月号「胎盤のミステリー」を参照させていただきました。          

2021.6.20

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