第2回 特別支援学校を訪問して 

2020年11月20日

本日、都内の特別支援学校に行ってきました。勤務先の大学の学生の教育実習の様子を見に行くのが目的でした。今年度リニューアルされた学校は広々としていて、自閉症児などが過ごしやすいように随所に工夫がなされている大変魅力的な学校でした。

 

学校の中を一通りご案内いただいた後、実習中の学生の授業を見せていただきました。授業を受けている生徒は比較的重度な障害を持っており、皆、車椅子に乗っていました。授業が進むと、先生の元気な声かけに手をゆっくりと上げたり、微かに笑顔も見せるなど、それぞれの生徒なりに授業に反応し始めていることがわかりました。

 

その中で、手を揉む動作をする女生徒がいました。レット症候群だとわかりました。研究所や医学部に勤務していた時の研究対象の先天性の自閉症の病気です。その生徒が授業中、ほとんど下を向いて両手を動かしているだけで、先生の話に興味を示していないように見えました。しかし、授業の最後のところで、先生が差し出した紙で作ったサンドイッチに反応し、顔を上げ、前を見据えて、凛とした中学生の女子の顔つきをしたのです。

 

その時に、その女生徒は言葉が出ないのですが、「実は授業をちゃんと聞いていてわかっていたのではないか」と思いました。この病気はてんかん発作があるため病院で薬をもらっているものと思います。一方、支援学校では姿勢が定まらないこの生徒に専用のコルセットを依頼し、きちんと机に向かえる姿勢になる椅子を工夫して作られておられました。そのおかげで勉強に向かうことができて、授業の内容が分かったのではないかと思いました。

 

以上より、「医師という職業は病気の悪い面を抑えるのが仕事であり(私もそちらでしたが)、教師は良い面を伸ばすのが仕事であると。悪い面を抑える薬があるが、良い面を伸ばす薬はないので。」と思うに至りました。

 

授業が終わった後、これを担当した学生と少しだけ話をしました。学生によると、友だちの声にお互いとてもよく反応するのだそうです。大人の声でなく、同年輩からの声はちがうのだと思いました。だから重度の障害を持っていても、やはり学校に行く意義はとても大きいことがわかった、今回の支援学校の訪問でした。

 

もしこれを読んでくださっている方の中で障害傾向の子どもをお持ち方がおられましたら、良い環境、良い学校、良い先生たち、そして友だちたちがとても大切であることをお伝えしたいと思います。

2020.11.19

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