第10回 代替医療その2
2021年05月07日
昔から知られているごく身近な代替医療というとやはり鍼灸と指圧などではないでしょうか?
その共通の治療理論は人体にある「経絡」という「気」と「血」の通路があり、気の出入り口が「経穴(ツボ)」であり、そこを刺激することで身体のいろいろな臓腑の不具合(虚実の証)を直していくというものです(1)。
近代医学が確立されて長い年月がたっていますが、実はいまだにこの経穴(ツボ)についての解剖学的な解明はされていません。やっと最近、そのことを皮膚の電気的状態や硬さなどからツボの存在を示すデータが出されてきています(2)が、皮膚表面近くの部分だけであり、それこそ、鍼でしか届かないような深い部分のツボはいまだ謎のままです。
私は韓ドラのファンで、『チャングム』や『ホ・ジュン』、『馬医』などに出てくる鍼治療は実在していると信じていますし、それを科学的に実証することもできると思っています。もし、科学的に裏付けされた鍼治療が確立されれば、大変大きなメリットがあると思います。 まず一つ目は、大きな診療設備のない救急現場、奥地、在宅でも治療ができること、二つ目は薬物を使わないかあるいは最少限に抑えることで副作用を低減できること、だと思います。後者については動物の治療にも使えるならば例えば畜産品への薬物の移行なども抑えることになると思います。
人での実証実験は十分なものはまだえられていないようですが、動物を使った実験でマウスの鍼麻酔効果をエピジェネティクスから調べる文献(3)が出ています。
それは、「手術で人工的に引き起こされる慢性疼痛を改善する効果が鍼治療により観察された(図2)。またさらにそれは、前頭前野(PFC)における全体的なDNAメチル化(遺伝子の機能発現を抑えるエピジェネティクスのしくみ(エピジェネティクスの散歩道 第4回 参照))の回復と関連していた(図3)」というものです。
すなわち、鍼麻酔の効果は、確かに存在し、しかもその作用は脳の痛みを感じる部分にエピジェネティックな変化をおこしているらしいのです。
参考文献
1:平馬直樹監修;東洋医学のすべてがわかる本(ナツメ社)
2:佐々木和郎 経穴とは何か 鈴鹿医療科学大学紀要. (20)(2013)
3:J.-H. Jang et al. Pain 162 (2021) 514–530
2021.5.8