第4回 「睡眠」その1 眠りと体内時計
2020年12月11日
今回から睡眠について考えてみたいと思います。皆さんはなぜ眠くなるのか不思議に思ったことはありませんか? しかもそれは人だけでなくペットや動物園の動物たちをみても共通のことだと思われます。
すぐ思いつくのは、起きているうちに少しずつ (運動をすると筋肉に疲労物質(乳酸)がたまっていくように) 眠気を催す物質がたまっていくのではないかということですね。でも調べてみるとどうもまだよくわかっていない事もあるようですが、脳はもともと眠った状態であるのが基本で、活動を活発にさせる物質が出てでてきて目覚めさせ、夜になるとその作用を抑える「メラトニン」という物質が出てきて眠りを催させるという事のようです(1,2)。
この脳を目覚めさせているのはアドレナリン、オレキシン、ヒスタミン、セロトニンなどの体内から出てくる生体ホルモン物質です。この中には、痛みや発熱を引き起こすヒスタミンというホルモンがあります。よく風邪薬、鎮痛剤を飲むと眠くなるのは、このヒスタミンの働きを抑える成分が入っているからです(1)。
逆に活発に脳を働かせようとするホルモンの働きを抑える「メラトニン」は「昼と夜のリズム」でコントロールされていて、夜にしか体からでてきません。よく海外旅行をしたときにおこる時差ボケはこのことが関係しています。
そして、この「昼と夜のリズム」は体にある時計「体内時計」と光を感じて針を進めたり遅らせたりする「光センサー」によって作られています。 つまり、昼と夜の季節的なずれや地域的なずれ、すなわち環境の変化に応じてメラトニンなどのホルモンを出させるオンオフの仕組みがあって、これには「エピジェネティクス」が大きな役割をしていると考えられています(3)。
これは、例えば、眠る0~3時間前に、できるだけ部屋を暗くする、0~30分前にアイマスクを付けるなどの条件で入眠のしやすさが変わるか、とか自分の体を使ってもいろいろ「My研究」ができると思います。
参考文献
1.筑波大プレスリリース、2018 .7.17「睡眠と覚醒を制御する神経回路を解明」
2.上 野 敬 太(2004):「睡眠と免疫の不思議な関係」化学と生物 Vol. 42, No. 5,
3.重吉 康史 (2003):「体内時計のしくみと合わせ方 2003年10月近畿大学公開講座