第7回 男と女:その2 性のゆらぎ

2021年02月21日

 前の文章では哺乳動物の性は、Sry遺伝子によって、厳密に決められていると書きました。しかし最近の研究から、性は一度決められた後でも、それほど安定ではないことが分かってきました。それは哺乳動物の性を決めるSry遺伝子があるY染色体が老化(度重なる細胞分裂)によって離脱することがあるからです。Y染色体にはその発生段階から、オスとしての機能を表し・維持するのに必要な遺伝子が多く存在しています。現在では、ヒトの性は男と女の二つに大別するのではなく、その間にさまざまな性がある、「性のスぺクトラム」と考えるべきだと考えられつつあります。

 

 これまでに、個体、器官、組織、細胞にもそれぞれ性があり、それが老化などによってゆらいでいること認められつつあります。つまり、性は環境に最も適した「性」を取ることになり、これまで考えられてきた以上に多様性や可塑性に富んでいることが分かってきています。さらにヒトではY染色体のSry遺伝子によって男性となることが決定された後でも、Y染色体の脱落によって、オスとしての機能を維持しているさまざまな遺伝子も同時にが欠落し、それに伴うそのオスとしてのとなるべき生化学的な反応も経路の機能が保たれないことによってから、「性のゆらぎ」が起きているものと考えられています。

 

 普通の男性では、80歳以上の男性の血液細胞の約20%では、Y染色体が消失していることが知られています。この現象は喫煙などの因子によっても促進され、アルツハイマー型認知症やがんやその個人の死亡にも関与しているものと考えられています。血液細胞以外ではY染色体の喪失は調べられてはいません。

 

 Y染色体の喪失は、胎生期にも成長期にも生じているものと考えられています。その場合、核型は44+X型となりターナー症候群としての臨床症状を取り、低身長、卵巣機能低下(この人は女性となります)および特徴ある骨格を呈することになります。このことから発生初期ではY染色体のSry遺伝子以外も様々な遺伝子が性分化において重要なことが示唆されています。

 

一般集団では、約5%程度がLGBTに該当することが知られており、これらの現象が「心の性」と関連しているものと考えられています。連続した表現型スペクトラムとしての「性の再定義」を考える場合には、このことも大変重要な問題であると考えられています。

 

この稿は 宮戸真美、深見真紀(2019)を参考にしたことを付記します。                                  2021.2.21

                                 

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