エピジェネティクスの散歩道〜第1回 はじめに その1〜

2020年09月23日

基本となる遺伝の仕組み

 これから、「エピジェネティクスの散歩道」という題で、「エピジェネティクス」に関係する、生物学や医学に関してのさまざまな事柄について、やさしく解説をしてゆきたいと思います。「エピジェネティクス」をよく理解していただくために、まず、その基本となる遺伝の仕組みについて、これまでに分かっていることをおさらいしてみましょう。

 ヒトの体はおよそ40兆個の細胞からできており、それぞれの細胞はその働きに応じて、200種以上の働きと形とが異なった細胞に特殊化されています。これらはすべて、たった1細胞の受精卵に由来しているのです。この驚異的な働きを司っているのが、「エピジェネティクス」なのです。ヒトの細胞は、核と細胞質からなっており、周りを細胞膜で囲まれていて、「真核細胞」と言われています。「真核細胞」からできているほとんどの生物は、多くの細胞からできている「多細胞生物」です。はっきりとした核を持たない細胞からできている生物の細胞は、「原核細胞」と呼ばれ、単細胞からなる生物が多いのですが、遺伝の仕組みは「真核生物」とほとんど同じです。核には、生物の遺伝を司る「遺伝子」があります。また、タンパク質の合成は主に細胞質で行われます。

 遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)からできています。これは簡単に言えば、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンという4つの化学構造の異なる「塩基」という物質がつながった長い鎖です。塩基とは、英語のアルファベットの働きをしますが、たった4文字しかありません。またこの仕組みはすべての生物に共通です。ヒトのDNAでは約3億個の塩基が並んでいます。DNAの遺伝情報は、並んでいる塩基に書かれており、3つの塩基の並び方で1つのアミノ酸が決められます。これを「遺伝暗号」と言います。遺伝子は、それぞれがタンパク質を作る情報を持っていますが、ヒトでもおよそ2万程度しかありません。これは、世界を挙げて行われた、「ヒトゲノム解読計画」で分かったことです。この結果、遺伝子はDNAの上に隙間だらけで存在していることが分かりました。その他の部分は、ジャンク遺伝子(がらくた)とさえ呼ばれていました。これらの情報は、細胞分裂と同調して、正確に娘細胞に分配されます。 

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