第4回「健エピのつどい」だより 2022.4.30
2022年05月13日
遺伝子そのものではなく、DNAやそのまわりのいろいろな化学修飾によってその働きを制御する「エピジェネティクス」は日常生活において健康を考える上で有用な知識になっています。そういったことを題材に生物学研究者や医師に教育職や福祉など多様な職種の方々で開いた「健エピのつどい」の第4回目の公開版をお送りします。
今回は、澁谷代表代行が、これまで体験してきた座禅(瞑想)について前回見てきたようなオキシトシンやセロトニンとのかかわり、さらにはエピジェネティクスについて紹介しました。
- 私の禅(瞑想)体験
40歳代のとき、仕事上のストレスなどからうつ状態となり、薬物治療を受けました。しかし、薬を飲み続ける不安から、薬に頼らないで完治したいと思い、以前から関心のあった禅を曹洞宗最乗寺、多嶽山總持寺などで体験し、現在は湯河原の黄檗宗・瑞應寺の座禅会と臨済宗のオンライン座禅会(早朝15分で椅子座禅も可)に参加しています。また、湯河原町のマインドフルネスの会にも1年参加しました。
2.禅(瞑想)とは
禅宗三派(曹洞宗・臨済宗・黄檗宗)が座禅の主流ですが、天台宗などでも座禅(天台小止観)を採用しています。またどの宗派でも「冥想」は含まれています。
曹洞宗を設立した道元は『正法眼蔵』の中で「只管打座」をとなえ、座禅には何も求めず、又目的もないこと(「身心脱落」)を提唱しました。また、「身心」として体を第一としています。 C.F.:「唯臓論」(後藤仁敏・鶴見大歯学部)vs 唯脳論(養老孟司)
座禅の三要素
1.調身‥体、姿勢を整える
2.調息‥呼吸を整える
腹式呼吸・息を吐くことが吸うよりも大切
呼吸のみが自分で調節できる。
3.調心‥心を整える
一定のリズムで行う腹式呼吸は脳のセロトニン神経を刺激し、オキシトシン効果が期待できるとされています。(オキシトシン受容体を持つセロトニン神経が二次的に活性化されたものと考えられます。)
3.座禅の科学
座禅はセロトニン神経の働きと相関関係があり、セロトニン神経の働きを強めて、活性化するのが、「冥想法」であり「座禅」です。集中して一つのことをすると、大脳の働きや心の動き、痛みの調節、筋肉への作用が現れてきます。座禅や釈迦の呼吸法が、セロトニン神経を活性化し、心や体にいろいろな影響を与えています(有田秀穂・東邦大)。
- 瞑想による脳開発
新たな神経回路を丁寧に作る作業が冥想です。人類がこれまで悩んできたすべて苦しみ・問題は、冥想が成功すれば消えてしまいます。人間は昔から問題ばかり抱えていますが、脳の開発・冥想実践によって、精神的な問題・生き方に関する問題は消滅すると考えられます。
コメント1.小児に予防接種をする際に繰り返し風車を吹かせて、 痛みを紛らわせるようなことをしている。吐息、一定のリズムの運動などはセロトニンの作用を通して痛みを和らげるということを使ったことかもしれない。
コメント2.外国の学会で英語での発表を聞いているうちに瞑想状態になって新しいアイデアが浮かぶことがあった。瞑想と脳開発は実感している。
質問1.ADHDやASDなどの障害者施設での座禅の利用などは?
答え:ダウン症の子供も座禅に来ていたりする。なかなかきちんと座禅することはできないが親子で座禅に取り組むことが見ていても感動的。おそらくよい効果はあると思われる。コメント3.ADHD,ASDなどの方への「感覚統合療法」というものがあって、運動をさせた後に座らせて落ち着かせるということをしている。座禅の効用と共通するものがあるかもしれない。
コメント4.オキシトシンは適度の皮膚刺激で分泌が促進され、ASDなどはオキシトシンの効果が証明されているので、鍼灸やマッサージなどを施設で施術することも有効では?
答え:公的な援助を受けている現状では、なかなか有効性が証明されていないものを取り入れることは難しいが、将来的には可能かもしれない。
次回は、皮膚感覚と精神などについてエピジェネティクス的観点から取り上げる予定です。