第4回 児童養護施設だより
2020年12月09日
虐待の負の連鎖について
今年度から定期的に児童養護施設に行っている。地方自治体が医師の参画を義務付けたからである。医師としてこの半年間、さまざまなことを学ばせていただいた。
訪問して最初に驚いたことは、施設に預けられている子どもが皆、「親がいる」ということである。「身寄りがないということはない」ということである。普通は両親が事故で死亡して死に別れ預けられる施設というイメージだと思われるが、見事にそれが覆されたのである。ここに現代日本の社会の縮図があるように思われた。
そのほとんどは母親が精神疾患で治療薬を飲んでいるケースである。父親だけでは子育てが十分でないために預けられる運びとなったわけである。したがって行政が取るべき対策としては、母親を精神疾患にさせない予防策であることがわかる。
昔は、母親のお母さんがサポートしていた。しかしこれらのケースは母方祖母が頼りにならない。育児放棄歴のある母方祖母である。だから近親者で頼りになる人がいないということになる。母親はきちんと育てられた経験がない。だから自分も育てることができないのである。虐待の負の連鎖である。
そこで行政が取るべきことは、育児放棄や虐待を受けた女の子の長期フォローである。その子が子育てを始めるときまで良い意味で監視していて、支援や救いの手を積極的に差し伸べるのである。その際、その女の子は引っ越すのである。ここで行政間の連携である。情報伝達である。ご検討いただけたら幸いである。
2020.12.6