第2回子育て相談室
2020年11月01日
このHPが開設されて1ヶ月になろうとしています。子育てに関することをこまめに発信しようと思っていたのですが、前回からだいぶん空いてしまい申し訳ありません。
ところで、昨日、健エピネット顧問の林和彦先生が施設長をされておられる障害者施設で、健エピネット のイベントとなる講演会を行いました。この講演会の中で私が、エピジェネティクスに関する講演をさせていただきました。対象はこの施設に入所されているお子さんをお持ちの保護者の方々でした。
講演会の内容は「エピジェネティクスとは何か、エピジェネティクスからみた発達障害の理解、遺伝子のエピジェネティックな可逆性を踏まえた療育」の3つでした。講演後、お聞きいただいた保護者の方々から「自分の子どもは成人になっているが、まだエピジェネティックな可逆性があるのか、まだ良くなる可能性があるのか」といったご質問をたくさんいただきました。
講演会後、健エピネットのスタッフ4人で食事をしました。その席でいろいろな話が出たのですが、一番印象的だったのが「エピジェネティックな作用を持つ薬を使って遺伝子の働きを元に戻す治療が研究されてきたが、これからは薬ばかりでなく良い環境で治療する発想が大切ではないか」という提案でした。
実際、「良い環境の中で育てると脳の中の遺伝子の働きが改善すること」が動物実験で示されてきました。ヒトの子どもでもそうであるかどうかを証明していくのはこれからです。
一口に「良い子育て環境」と言っても、おそらくお子さん一人ひとり、違ってくるのではないかと思います。
このHPを読んでくださっておられる皆様からぜひご意見いただきながら、この研究を進めていけたらと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
令和2年11月1日(日曜日)
エピジェネティクスに興味があります。
英国のエピジェネティクス研究者、ブルースリプトン博士の「思考のすごい力」を読み、思考で細胞が変化するということを知りました。思考を開放的にするために、ヨガ、氣功、瞑想などのエネルギーワークなども効果的だということも耳にします。医学博士でおられる久保田先生の見解をお聞きしたいのですがいかがでしょうか。
石田様
貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。
エピジェネティクスは栄養や薬剤というような直接的な物質の影響も受ける遺伝子の調節メカニズムですが、動物実験では、虐待などの幼少期の精神ストレスといった直接的な物質ではないものの影響も受ける遺伝子の調節システムです。
個人的には幼少期に受けた影響は生涯持続するという意味の「三つ子の魂百まで」のことわざの生物学的根拠も、幼少期の環境で切り替わった遺伝子のスイッチの状態は生涯持続するメカニズムである「エピジェネティクス」にあると思っています。
上記の虐待は負の環境ですが、邪気を振り払い正気を入れる「気功」はいわば正の環境であり、これによっても身体の隅々の遺伝子のスイッチがエピジェネティックに切り替わるのではないかと思いました。とても意義のある魅力的な研究テーマになると思いました。
少し脱線しますが、西洋の薬だけでなく漢方薬にもエピジェネティックな作用があるとの論文が出始めています。エピジェネティクスに関心を持っていただいたことをとてもうれしく思っています。これからもご質問やご意見をいただけましたら幸いです。